札幌の高校生が”クマとの共生”考え、学んだこととは

北海道札幌市は2017年に「さっぽろヒグマ基本計画」を設け、市民生活の安全を守りながらクマとの共生を目指すとしていますが、駆除の対象となる「問題個体」のクマが毎年のように出てきてしまっています。クマとうまく共生するにはどうすればよいのか?マチの未来を担う、若い世代も動き出しています。

6月、札幌市南区の森を歩く親子のヒグマの様子が大学の研究用の固定カメラに記録されました。母グマの後をくっついて歩く、1歳くらいの子グマ。母グマに背中をこすりつけています。クマは木に背中をこすりつける習性がありますが大人の真似をしたいのでしょうか。

人口190万人の都市でありながら豊かな自然に囲まれる札幌。その魅力のひとつが、時には、クマとの間に「亀裂」を生じさせてしまうのです。7月、南区で繰り返し出没したクマは、人を見ても逃げる様子はありません。このクマのものとみられるフンからは、ごみ袋の一部が見つかりました。人慣れしたこのクマは、「問題個体」とみなされ、駆除されました。

札幌啓成高校の生徒「クマが駆除されてしまうことに、どうしても肯定的な意見が持てなくて」

「問題個体」のクマを出さない方法はないのか?札幌市厚別区の札幌啓成高校で、7月から「クマとの共生」を考える特別授業が始まりました。23人の生徒が、参加したいと、自ら手を挙げました。

札幌啓成高校・植木玲一教諭「ヒグマはブラックボックスというか、野生動物との適切な距離感や対応を考えてもらえたら」

きっかけは2019年6月、高校に隣接する野幌森林公園周辺で相次いだクマの出没です。この場所でクマの出没が確認されたのは、78年ぶりのことでした。

この日、特別講師として呼ばれたのはクマの生態に詳しい、酪農学園大学の佐藤喜和(よしかず)教授です。78年ぶりのクマの出没は、なぜ起きたのか?クマの気持ちになって考えてもらうため、公園に向かいました。

酪農学園大学・佐藤喜和教授「クマの食べそうなものありますか?」

札幌啓成高校の生徒「ヤマブドウ!」

クマの好物がたくさんあるのを確認しながら、さらに、進むと…。


酪農学園大学・佐藤喜和教授「あ、境界こえちゃったね」

札幌啓成高校・植木玲一教諭「今高校の敷地出たから」

札幌啓成高校の生徒「え?わかんない」

生徒たちは、高校と公園の「境界線」をまったく気にすることなく越えましたが、同じことが、クマの気持ちでも言えるというのです。

酪農学園大学・佐藤喜和教授「私たち人間は、看板や門があってここから公園だとわかるが、クマの気持ちになって見ると、差がない気がするよね?ちょっとした緑豊かな場所がたくさんある札幌には。でもクマにとってはここから人が住む市街地とか高校生が勉強してるところだから行かないほうがいいとかわからないし、誰も教えてくれないから、ふらふらいっちゃう」

2019年出没したクマは、最初は木の実など自然のものを食べていました。しかし7月、農園のハスカップを食べ、その後、メロンやデントコーンの食害も確認されるようになりました。そして9月、「問題個体」として駆除されました。人にとっては、78年ぶりの「異常事態」でもクマにとっては、いつもの行動の延長線上のことだったのかもしれません。

札幌啓成高校の生徒「クマには分からないのに出たからだめ、食べたからだめは、ちょっとおかしいんじゃないかなと思った。まずはクマに対する知識をいろんな人が知るべきだと思ったから広めていきたい」

札幌啓成高校の生徒「(以前は)ヒグマに何とも思うことがなくて、身近なものではなかった。どういうルートで来るとか、なぜ来ちゃうのかとか、どういう対応すればいいとか、自分の中でなんとなくわかってきた」

札幌市南区の石山地区です。豊平川の河川敷で、地域の住民らが年1回、背の高い草を刈り取っています。クマが身を隠せる通り道をなくして住宅街に近寄らせないためです。2014年に始めて以来、この河川敷での出没はなくなりました。草刈りの後は、酪農学園大学の学生とクマの生態を学びます。

酪農学園大学の学生「草刈りをして見晴らしがよくなるとクマはどうなるでしょうか?」

クマ役の学生「人にみつかっちゃう!これはいけない!」

酪農学園大学の学生「こういう感じで山からマチにクマが下りてきにくくなる効果がある、草刈り活動です」

石山地区町内会連合会・寺田政男さん「石山地区は当たり前のようにやってるので、そういう取り組みをしてるからクマがいなくなることが大事なのであって、南区だけではなく他の地区もこういう取り組みを考えたらいい」

酪農学園大学・佐藤喜和教授「新型コロナ対策だったらマスクをする、手を洗うのは自分たちでやること。同じように、クマが出てきてほしくない場所なら、自分たちで身の周りはきちんとしましょうよという意識が広がり常識になると、”クマが近くにいるけど市街地にはなかなか入ってこないマチ”ができあがっていくのかな」


《取材メモ》

クマを問題個体にさせないための見えるカタチでの「境界線」作りは、南区の石山以外にも広がっている。また、手入れが行き届かなくなった果物の木を撤去する取り組みも始まっている。クマの特別授業が始まった札幌啓成高校の生徒たちは、2021年2月の学術祭で、その成果を発表するとのことで、高校生目線でどんな報告をしてくれるのか、楽しみだ。

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