いま増えている『老老相続』って、知っていますか?

2018年の法律改正を受け、変わった『相続』のルール。7月には『自分で書く遺言』の新しい制度も始まりました。そんな中、いま増えているのが『老老相続』。実際に、80歳以上の被相続人の割合は1989年では4割未満でしたが、2016年には約7割にまで増加。これに伴い相続人も高齢に。『老老相続』の問題について、専門家がわかりやすく解説します。

ということで、今回のテーマは“財産を残す人”も“相続する人”も両方が高齢という『老老相続』についてです。どんな問題が起きやすいのでしょうか?

女性や高齢者の問題に詳しい行政書士の塩崎由花里(しおざき・ゆかり)さんに、詳しく解説いただきます。

今回は、太郎さん一家を例に、『老老相続』で起きる様々なケースを見ていきます。家族構成は、90代の太郎さんと80代の妻・花子さん。60~70代の子ども3人です。一男さんと二男さんは結婚していて、末っ子の三恵さんは1人暮らしです。この状態で、もし太郎さんが亡くなったら、妻の花子さんと、兄弟3人の計4人で、太郎さんの財産を分けて相続します。

ただ、最近増えているのは、【相続人である子どもが、すでに亡くなっている】ケース。もし一男さんが、太郎さんよりも先に亡くなっていた場合は、被相続人である太郎さんから見て「孫たち」に当たる3人が、一男さんが生きていた場合に受け取るであろう財産を相続します。これを『代襲(だいしゅう)相続』といいます。

行政書士・塩崎由花里さん「一男さんが生きていれば、相続人は4人ですが、一男さんが亡くなったことで、孫も相続人になるため全員で6人に増えます。孫世代は働き盛りで忙しく、なかなか話が進まないことも多くなるほか、人数が増えれば増えるほど話がまとまらなくなることが多いです」

相続の際には様々な「書類」などが必要になります。まず大事なのが『遺産分割協議書』です。太郎さんの『遺産』をどう分けるのかを、相続人全員で話し合って合意し、内容を文章にまとめます。金融機関への払い戻しや家・土地などの不動産の名義変更の手続きなどで必要になる書類です。この『遺産分割協議書』を作る上で必要なのが、亡くなった人=太郎さんの、生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本のほか、相続人全員分の現在の戸籍謄本や印鑑証明、実印などです。相続人の中に道外在住者や海外勤務の人がいると、個人では手に負えない場合もあるため、相続に慣れた専門家に依頼するのもオススメです。

続いて『老老相続』で多いのは、【相続の話し合いや手続きを進めている最中に、相続人が亡くなってしまう】ケースです。太郎さんが亡くなった後、その相続の話し合いや、手続きが終わらない内に、相続人である二男さんが亡くなり、次の相続が始まってしまった場合、『数次相続』が発生します。今後『老老相続』が増えるのに伴い、ますますこういったケースは増えそうです。

この場合、相続は【亡くなるタイミング】で大きく変わります。もし、二男さんが、太郎さんの相続の話し合いの途中で亡くなった場合は、相続の話し合いは最初からやり直しになり、二男さんの妻と2人の子どもたちも、太郎さんの相続の話し合いに参加することになります。一方、すでに話し合いは終わり、遺産分割協議書に二男さんの署名・捺印が終わっていた場合は、その内容で相続が行われ、二男さんの妻や子が関与することはできません。

『老老相続』で考えられるケース3つ目は【相続人に認知症の人がいる】ケースです。80代の妻・花子さんが認知症で、被相続人の太郎さんが『公正証書遺言』を残していた場合は、それに従うことになります。しかし、『公正証書遺言』がない場合は、『遺産分割協議』はするものの、親族などが家庭裁判所に申し出て、認知症の花子さんに『成年後見人』をつけてもらう必要が出てきます。

花子さんを除き、他の家族だけで話し合って決めることはできません。相続人・全員で決めなかった場合、話し合いは『無効』になってしまいます。こういったケースを防ぐために、元気なうちに相続の準備をしておくのが大事です。

元気なうちにやるべきこと。まずは、「財産の把握と整理」です。5つも6つもある銀行口座などは、3つくらいにまとめるのがいいでしょう。電子マネーやネットバンキングを使っている場合は、セキュリティーの問題もありますが、エンディングノートなどに、パスワードなどをまとめておき、遺族が自分の死後、分かるようにしておくことが大事です。

準備の中で大事なのが、『遺言』です。まずは『自筆証書遺言』のポイントをご紹介します。これまでは、すべて直筆(手書き)で書かなければならなかった『自筆証書遺言』ですが、特に面倒だった『財産目録』はワープロやパソコンなどで作成できるようになり、さらに通帳のコピーなどでも代用でき、最後に自署すればOKになりました。さらに、7月から始まったのが『自筆証書遺言保管制度』です。自分自身で保管することで、紛失の心配を抱く人もいたかもしれませんが、新たな制度によって、法務局に預けることができるようなりました。預ける際には、形式に不備がないかをチェックしてくれます。ただし、内容についてはチェックされないので、自分で遺言を書くのが難しいと感じる場合は、費用をかけて公証役場で作成する『公正証書遺言』を作るのも有効です。

最後のポイントが【親族間のコミュニケーション】です。実際に相続で揉めるのは「気持ち」の部分で揉めることがほとんど。金額が大きくなくても、揉める時は揉めてしまうんだそう。『遺言書』もそうですが、日ごろからコミュニケーションを取って、家族にその「気持ちや思い」を伝えておくことが大事です。親が思っているほど、子どもたちが仲良くないことも少なくありません。ことしのお盆は、家族で集まれないかもしれませんが、テレビ電話などで、連絡をとってみてはいかがでしょうか。


教えて頂いたのは、女性や高齢者の問題に詳しい行政書士の塩崎由花里さんでした。

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