どうなる北海道新幹線?動き出した札幌の残土問題

約10年後の開業を目指して、急ピッチで進められている北海道新幹線の札幌延伸工事。その行方を左右するのが、人に有害とされる土砂の置き場の問題ですが、この1年、迷走していた札幌の「候補地選び」に7月、これまでよりも一歩踏み込んだ動きがありました。

札幌駅北口です。7月から始まった工事。実は、新幹線乗り入れのための準備です。2030年度に札幌へやってくる、北海道新幹線。その準備は、別の場所でも行われています。

札幌市の手稲区山口では、作業員が地形を調べる、測量調査をしています。しかし、新幹線に関わるこの調査に、住民たちは待ったをかけます。

周辺住民「手稲区山口のここが受け入れ指定みたいな感じになっているのが許せない」

ここは、手稲区山口にある「ごみの最終処分場」。札幌市と新幹線を建設する鉄道・運輸機構は、この一角に工事で出る大量の土砂を置く計画を進めています。

2016年に本州とつながった北海道新幹線。札幌まで延びると、「新小樽」まで12分、「倶知安」まで25分、「新函館北斗」まで1時間5分、さらに、時速320キロで運転できれば、「東京」には4時間半で到着します。しかし、札幌市内の工事は、計画から1年半以上遅れています。その最大の理由というのが、山にトンネルを掘ると出てくる土砂の置き場が決まっていないことです。

新幹線の最大の特徴は「移動の早さ」です。そのため、できるだけ線路は真っ直ぐに。結果として、山を貫くトンネルも多くなり、札幌と新函館北斗の間も、8割がトンネルとなります。

「新小樽駅」を出た新幹線は、朝里川温泉の近くでトンネルの中へ入ります。そして、札幌駅近くの石山通付近で地上に顔を出し「札幌駅」に到着します。札幌と小樽を結ぶ「札樽トンネル」です。

このトンネル工事で、出る土砂のおよそ半分である115万立方メートルが、人に有害とされるヒ素や鉛などを含む、汚染対策が必要な土砂と見込まれています。この土砂の置き場として2019年、候補に挙がったのは「厚別区山本の市有地」と「手稲区金山の民有地」です。

しかし、住民からは「命をかけてでも賛同できない」「絶対反対!」といった反対意見が続出し、反対の署名も提出されました。その結果、未だに、土砂受け入れを判断するため「事前調査」は始まっていません。そんな中、6月「第3の候補地」に浮上したのが「手稲区山口のごみの最終処分場」でした。すぐ隣には、花や果物を育てている農家もあります。その一人、大加瀬敏子さんはこう語ります。

候補地周辺の農家・大加瀬敏子さん「このへん砂地ですっごい風強い。だからかなり遠くでも残土が飛んでくるのでは。風評被害っていったん出ると戻すのに大変な苦労がいる」

山口地区で農地組合長も務める、木村茂夫さんです。いまはトマトやなすなど10種類以上の野菜を育てており、先代から150年続く農家です。

山口西農事組合・木村茂夫組合長「土と水と空気を汚されるのは何がなんでも絶対だめ」

6月下旬に「住民説明会」を開催。そのわずか2週間後には「事前調査」も始まりました。それに対し山口西農事組合・木村文夫組合長は「事前調査の案内という形でチラシが届いたが、いつからやるか話もしない。あまりにも強引すぎる」と語ります。

木村さんの息子、文哉さんも「やる人たちはここに住むわけじゃないからいいが、ここに住んでいく住民は容認できない。数週間のうちに勝手に決まってどんどん進むのは理解できない」と話します。一歩踏み込んだ「事前調査」の意味を札幌市の担当者は、こう説明します。

札幌市担当者「ここが調査して受け入れ地不適になることはない。調査を行えばこういう対策方法で考えていると説明できる」

現在の開業予定は「2031年3月末」。もし、札幌が冬のオリンピックを誘致した場合、開催は「2030年の2月から3月」。これに新幹線を間に合わせるには、「2029年中」の開業がひとつの目安になります。

鉄道・運輸機構 担当者「現在受け入れ地が確定していない状況だが、この状況が続けば開業に影響が出ることが考えられる」

迫るタイムリミット。しかし、札幌の土砂の終着駅は、まだ見えていません。


《取材メモ》

▼札幌市の秋元市長は、事前調査について「調査して具体的な対策を示すことが住民の不安を解消することになると判断した」と話しています。一方で「手稲山口地区」を受け入れ地にするかについては「まだ丁寧に(説明)しなければならない」と述べ、住民の理解が前提との考えを示しています。

▼札幌市は「安全対策」について、今回の「事前調査」を基に具体的な対策についての説明会を開くと話しています。住民の理解を得るための丁寧な説明が求められます。





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