奥尻高校野球部出場辞退の訳~大好きな島のために~

高校野球「夏の甲子園」の代わりとなる、夏季北海道高等学校野球大会が7月11日から開幕しました。現在も熱戦が繰り広げられる中、離島の野球部が出場を辞退しました。その理由とは。

部員11人の奥尻高校野球部。7月11日、この日は土曜授業が行われていました。世界史のテストに挑む野球部キャプテンの横山海斗(よこやまかいと)くん(写真右)。本来なら別の場所にいるはずでした。この日函館では、「夏の甲子園」に代わる北海道の独自大会が始まりました。奥尻高校野球部の3年生にとって集大成となるはずの舞台でした。

3年マネージャー・川田蓮さん「大会に出たいという気持ちはもちろん大きかったですけど、辞退を決断しました」

野球部は、3年生3人の区切りとなる大会を辞退しました。大事な大会を辞退したその理由は。

3年主将・横山海斗さん「新型コロナウイルスを自分たちが島を出て持ち帰ってきてしまった時のリスクが、自分たちが試合に出たいという気持ちと比べたときに、リスクのほうが大きいという風に判断したのが一番大きい要因ですね」

奥尻島には、病院が1つしかありません。「大会に出場して、もし自分たちが感染したら島の人たちに迷惑をかけてしまう…」そう思った3年生は、話し合いを何度も重ね大会を辞退する決断をしました。

3年主将・横山海斗さん「島が好きなので」3年生の決断に、後輩たちは…

2年・小島永遠さん「大会が決まったとき、1、2年生は出よう!と3年生に言ったんですよね。でも3年生は、奥尻の安全とかお世話になってる島民の方たちのことを考えたら、出ないほうがいいんじゃないかという意見が来て自分たちはびっくりした。でも自分たちも納得したんで今回の選択は正しいなと思った」

2年生キャプテン「きょうは3年生とできる最後の練習なのでしっかり確認していきましょう」

後輩たちは、先輩の島への思いを受け継いでいきます。夏の大会に出られなかった3年生ですが、とっておきの引退試合が用意されていました。

3年主将・横山海斗さん「監督のほうからこういうのやってみたら面白いんじゃないと話があった」

3年・成田青空さん「試合の場を設けてくれたというのは、うれしいしチャンスだと思って頑張りたい」

用意されていたのは野球経験のある島の有志たちとの引退試合。この提案を島の人たちも快く受け入れてくれました。


引退試合の2日前、横山くんは家族と食事に・・・

父・雅弘さん「大会に一番出たかったとは思うが、よく決断したなという感じはした。小学校の時から続けてきているものなので、一番最後の試合は見に行きたかったなという気持ちはある」

母・元子さん「どんな形であれ試合に出ている姿を見られるのがすごく嬉しいです」

3年主将・横山海斗さん「(引退試合は)楽しめればいいかなと」

そして迎えた引退試合の日。3年生の晴れ舞台を見届けようと、グラウンドにはたくさんの人が訪れました。相手となるのは、社会人野球の経験もある島民チーム。率いるのは、横山くんのお父さんです。

先頭打者のキャプテン横山くん。打ってよし!そして盗塁も2つ決めました。ガッツあふれるプレーでチームを盛り立てます。

マウンドを守るのは、千葉県出身島留学生の3年成田君。渾身のボールを投げ込みます!しかし、島民チームも手加減なし。全力で成田君のボールをはじき返します。

気づけば点差は大きく開いていました。

横山さんの母・元子さん「点数うんぬんよりも楽しそうにやっているのがいい」

試合は、島民チームの勝利で幕を閉じました。その後開かれた3年生の引退式。

3年主将・横山海斗さん「この場に時間を作って集まって頂き本当にありがとうございました。北海道の独自大会が決まった後選手たちで辞退することを決めました。賛否両論あると思いますが、前向きに終わろうと選手の中で話し合って決めたことなので、そこに関してはご理解の程お願いします。足を運んでくださってありがとうございました。楽しい時間になりました」

奥尻高校野球部のチーム目標は“楽笑(らくしょう)“。その言葉通り、温かな1日となりました。

3年・成田青空さん「3年間いろいろあったが、欲を言えばまだやっていたかったな。引退というのが実感がまだわかない状態ですね」

3年マネージゃー・川田蓮さん「みんながのびのびとプレーしている姿を最後に見られてすごい嬉しかったし楽しかったです」

3年主将・横山海斗さん「こんなに集まってもらえるとは思っていなかったし、地域の方々には優しくしてもらったので、感謝しないといけないなと思います」

大好きな島の人たちと迎えた高校野球最後の夏。3年間を全力で駆け抜けた球児たちは、また新たなステージへと走り出しました。

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