赤ちゃんの死の悲しみに寄り添う「グリーフケア」について

小さな小さなベビー服。流産や死産で亡くなった赤ちゃんに着せてあげたいと、手縫いで作られています。我が子を失った家族の悲しみに寄り添いたい…。自らも同じ悲しみをもつ女性たちがつなぐ「グリーフケア」の存在とは。

北海道札幌市に住む佐藤博子さん。家には9か月の次女・里紗ちゃんの写真を飾っています。

佐藤博子さん「突然死という形で突然亡くなっちゃったので、生きていれば23歳。もう22年くらい前ですね」

22年前の年明け、熱を出した里紗ちゃんは病院に入院。よくある子どもの風邪…そう思っていた翌日に容体が急変し、小さな命の灯は潰えてしまいました。

佐藤博子さん「病院は病気を治して終わりですけど、亡くなってしまうと、家族はそこからが始まりになるので」

最愛の娘を亡くした悲しみ・喪失感…。そんな中、佐藤さんの心の支えとなったのが「泣いてもいい」という言葉でした。ほっとして、すごく前向きな気持ちで受け入れることができたと話します。

大切な人を亡くして悲しんでいる人に寄り添い、手助けをすることを「グリーフケア」と言います。中でも、佐藤さんの心の拠り所は「SIDS(シズ)家族の会」。メンバー全員がSIDS=乳幼児突然死症候群をはじめ、病気や事故、そして死産や流産で「わが子」を失った経験者です。佐藤さんは、同じ境遇の家族に向けて、今では相談に乗る立場として「グリーフケア」を行っています。

佐藤博子さん「気持ちがよくわかるので、気持ちの共有ができるっていうのと、今たくさん泣いてくださいってことを最初に言いますね。私自身がやることで私自身のグリーフケアになっていたと思う」

その佐藤さんの元へ3年ほど前に相談に訪れたのが、苫小牧に住む石田朋美さん。死産や流産で亡くなった赤ちゃんに着せてあげるための、小さな小さなベビー服を作り、届ける活動をする「天使のはぐの会」の代表をしています。

石田朋美さん「全部、私があの時してあげたかった、知りたかったことがもとになっています」

石田さん自身は9年前、妊娠5か月でおなかにいた赤ちゃんを亡くしました。頭も心も全部止まってしまい、何かしてあげられることも思い浮かばず、今となってはものすごく後悔しているお別れだったと話します。行き場のなかった気持ちを初めて話せたのが、佐藤さんがいる「SIDS家族の会」でした。

石田朋美さん「赤ちゃんを思い続けていいんだよってSIDS家族の会で知ったこと、同じように思っている仲間がいるんだよって知ったことで、顔を上げる勇気になった気がします」

同じ思いをしたほかの家族が、小さな我が子と後悔のないお別れができるように…。パンフレットにもたくさんの思いを込め、石田さんも、ベビー服を通じてグリーフケアをする立場になっています。

石田朋美さん「このお洋服を着る赤ちゃんやご家族の気持ちを大切に思っている人が作っているので、一人じゃないよっていう思いと、お洋服と同じ生地で作ったくるみボタンを、お母さんへのプレゼントとして着けているので、いつまでも思い続けていいんだよっていうことが、伝わってくれればいいなと思います」

石田さんたち「天使のはぐの会」が作る小さなベビー服は、札幌にある産婦人科に贈られています。この病院では2年ほど前から、赤ちゃんを亡くした家族向けの「グリーフケア」に取り組んでいます。この病院で毎年10件ほど起こる「死産・流産」。スタッフは寄り添う気持ちを忘れません。

佐々木理恵師長「可愛いとか、こんなにちっちゃいんだって、涙と笑い、笑顔の中で衣装を選ぶ。おなかの中で亡くなってしまって出産するお母さんって、自分のことをとにかく責めるので、出産する時にはとにかくお母さんに『上手に赤ちゃんを産んであげられたよ』ってお伝えするんですよね。今は何かいい言葉がけをするというのではなくて、本当に患者さんが泣きたいときに一緒に泣いたり。実際にスタッフ一も緒に泣いてきます」

大切な人を亡くし悲しむ人に寄り添う「グリーフケア」。医療機関や市民グループなど、その輪は確実に広まっています。

石田朋美さん「乗り越えるってことはないと思うんですけど、本当に共に生きているから前も向けるし、気持ちが戻ることもあるし、それでいいんだと思っている」

佐藤博子さん「乗り越えるってことではなくて、私は受け入れるっていうことかなと思うので、悲しみは変わらないと思います。悲しみも一緒に受け入れるという感じ」


SIDS家族の会では、小さな子供を亡くした家族に向けた相談会を2020年2月に札幌市内で開催する予定です。また、全国から相談を受け付ける東京都の電話窓口もあります。


〈記者の取材後記〉

「遺族からは、例えば『いつまでも引きずっていたらだめだよ』とか『流産死産はめずらしいことじゃないから大丈夫』など励まそうとした言葉でかえって傷ついた、ふさぎこんだという声も多く聞かれるそうです。悲しい時に一緒に悲しんでくれる、今の気持ちをそのまま聞いてもらえるだけで安心できるとおっしゃっていました」



「SIDS家族の会」のサイトはこちら。

「天使のはぐの会」のサイトはこちら。







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