爆発事故から間もなく1年…移転を余儀なくされた店主の想い

北海道札幌市平岸で起きたアパマンショップの爆発事故から、まもなく1年になろうとしています。消臭スプレーが引き起こした悲劇。事故のため移転を余儀なくされたある店主の思いを取材しました。

2018年12月16日の夜、地下鉄平岸駅近くにある「アパマンショップ平岸店」で発生した爆発事故。警察によるとこの爆発で46人が重軽傷を負い、多くの建物や車が被害に遭いました。爆発の原因は誰もが耳を疑うものでした。

アパマンショップリーシング北海道・佐藤大生社長「スプレーの店舗の在庫は160本ほどあって、その中の120本を散布した」

そして作業の合間に店長が手を洗おうと、湯沸し器のスイッチを入れた瞬間、大爆発が起きたのです。あれからまもなく1年。道路を挟んだ向かいにある、ジャズバーは退去を迫られていました。

Jazz K's・山下英樹店長「残念でしかない。悔しいけれど。爆発のことは忘れられて来ている。でも僕は忘れないと思う」

警察は12月2日、アパマンショップ平岸店の34歳の元店長を「重過失傷害」と「重過失激発物破裂」の疑いで書類送検しました。

爆発現場から道路を挟んで向かいにあるジャズバー「Jazz K's」。爆発が起きた際、店の窓ガラスはすべて破損しましたが段ボールで応急処置をし、翌日には営業を再開しました。

しかし2019年4月、建物を管理する会社から退去を迫られます。爆発で建物が傾いてしまったのがその理由でした。話し合いの結果店主の山下さんは、退去期限が近づいた11月24日にここでの営業を終えることにしました。ところが28日に店を訪れてみると…。

Jazz K's・山下英樹店長「僕は寂しがり屋なのでなんとか片づけをしながら営業というかね」

この場所で父親の代から20年近く経営してきた山下さん。思い入れのある場所を離れる寂しさから24日以降も臨時営業という形で、退去ぎりぎりまで店を開けていたのです。店には、アットホームな雰囲気と、山下さんの人柄に惚れて足を運ぶ常連客ばかりです。ただ区切りの時はやってきます。

Jazz K's・山下英樹店長「これからこの店で、行灯がつくのはきょうで終わり。あしたは行灯つかないからね。一つの締めだね」

山下さんと常連客は明け方まで語り明かしました。

そして迎えた朝。30年以上人生を共にしたグランドピアノの引っ越し作業が行われました。

Jazz K's・山下英樹店長「親父の形見でもあるので、何とか維持したい気持ちでいっぱい。しばらくお別れ。また早く出してあげたいね。3年くらい前までは親父も弾いていたわけだし。とりあえず運べたから前向きに頑張ります」

長年の苦楽を共に支え合ってきたグランドピアノですが、行先は倉庫。実はまだ店の移転先が決まっていないのです。常連客が通いやすい平岸近辺で探しているのですが、夜遅くまで楽器を演奏できるところがなかなか見つかりません。

また移転に必要な資金はおよそ400万円。資金繰りにも悩む山下さんは、クラウドファンディングを利用できないかと考えています。この一年を山下さんは振り返ります。

Jazz K's・山下英樹店長「早いのか長いのかよくわからなかった。考えている暇がなかった。それよりも新しく考えて、新しいところとに進むしかない…みたいな。やるしかないですね」

爆発した跡地には現在テナントビルが建設中です。あの悲劇の面影はなくなりつつありますが、被害者の心の傷は癒されるどころか、今も深く刺さったままです。



〈取材後記〉

アパマンショップ側から山下さんには、爆発時に壊れた窓の修理費が出されたそうですが、移転などの費用に関しては出されていません。山下さんは訴えることも考えましたが、裁判費用の問題があり断念したそうです。アパマンショップの本社では、2019年9月期の決算で、事故による賠償額などに11億5千万円を計上しました。しかし、2019年12月時点でのHBCの取材に対し、被害者に対する補償が何人にどれくらいなされたのかなど、詳細な回答はありません。また被害にあった住民からは補償問題はほとんど進んでいないという声も出ています。

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