最高の羊乳チーズを求め羊飼いに!?異色のチーズ職人に迫る!

自らの手で育てた羊、そのミルクでつくる貴重なチーズ。北海道札幌市の隣、手稲山を望む石狩の樽川でゼロから牧場をつくり、羊を飼って、チーズをつくる…。そんな小さな牧場で大きな夢を抱く、57歳の職人に迫ります。

牧場の代表、山本知史(やまもと ともし)さん。自分が育てた羊のミルクでチーズを作りたいと、2016年から素人同然で酪農を始めました。

山本さん「エサを食べたいときに、食べられる環境を作る。それが一番いい羊飼い。地中海にあるイタリア領の島『サルデーニャ』では一年中羊を外で飼育している」

手作りの「エサ台」は、24時間、畜舎から自由に行き来し、冬でも外でエサを食べられるような作りにしました。

石狩市の住宅街からすぐの場所にある「石狩ひつじ牧場」。今では、手作りのエサ台はもちろん、畜舎も3棟あり、150頭の羊たちが暮らしています。

山本さんは何もなかった場所を農地として購入し、自ら延べ2キロの電気柵を設置して「ひつじの牧場」にしました。

これは、山本さんが2年間研究して作った独自の水処理プラントです!業者に頼んで掘った50メートルの井戸からくみ上げた水をこの装置で浄化します。飲料水として使用できるようになり、「石狩羊の水」として、羊に飲ませています。

今では、羊を飼い、チーズをつくる山本さんですが、かつては、東京の中学校で理科の教師をしていました。結婚を機に、北海道へ移り住み、32歳でワインを輸入する仕事がしたいと教師を辞め、独立。貿易英語や輸入の勉強をし、ワインを販売。そして、出会ったのがチーズでした。

山本さん「牛乳や水牛、羊、ヤギの乳で作られたチーズを食べたけど、羊は別格」

チーズにほれ込み、22年前からチーズの輸入販売をスタート。本場フランスやイタリアなど、現地に直接足を運び、ヨーロッパ各国の厳選したチーズを取り揃えました。

チーズは大きな塊のまま仕入れ、切りたてのフレッシュな状態で販売。札幌のレストランでも使用されるなど一目置かれる品ぞろえです。その中でも山本さんが魅了されたのが羊乳チーズでした。チーズ販売のプロとして次に興味を持ったのが、羊のチーズを作ることです。

3年前、資金を集めるために立ち上げたクラウドファンディングでは、多くの支援が集まりました。

山本さん「チーズの輸入販売もいいが、最終的にどこまでやれば自分が納得するか考えたら、農業からやるしかない、と」

2017年1月、自らオーストラリアに出向き、選別した羊80頭が、長い船旅と厳しい検疫を経て、石狩の地にやってきました。

でも、酪農は素人同然。到着早々、羊たちが逃げ出そうとする始末!そんなドタバタもありつつも、羊がやってきてから2年半が過ぎた今では、繁殖にも成功。150頭の羊を飼育しています。

アワシー種やイーストフリージアン種とポール・ドーセット種の掛け合わせや、サフォーク種など、北海道でも珍しい乳用種の羊が沢山。

さらに!おいしいミルクを出すため、機械も海外から輸入しました。羊が入るのを怖がらないような専用の体重計や、爪を切るために羊の体を安全にひっくり返せる「反転機」など、スムーズに作業ができる機械を揃えています。

牧場で羊の世話を一緒にしているのは、2019年春、羊の勉強をしに埼玉からやってきた青沼さんです。

青沼さん「羊のミルクを生産している牧場が少なく、それでここに興味を持ちました。いずれ自分の牧場が持てたら…」

エネルギッシュな山本さんがつくる羊のミルク。6月から10月までの搾乳期間で1.5トンと乳量は元々多くはありませんが、2019年に牧場に完成した工房で、羊のチーズづくりを見せてもらいました!

まずは、羊乳を68度くらいに加熱殺菌して冷やします。搾乳時と加熱殺菌後はろ過します。日本では、なじみのない羊のミルクですが、栄養が牛乳の1.5倍ともいわれていて、クセもなく美味しいそうです。

ここに、海外から輸入した羊乳に適した乳酸菌と、レンネットといわれる凝固剤を加え、保温器に入れます。チーズづくりも素人からのスタート。今も、毎日が試行錯誤です。

そして!先ほどの羊のミルクが程よく固まり、チーズの素となる「カード」が完成!このカードを切断していきます。切断したときに出る、黄色い液体ホエー(乳清)は羊の飼料として使われます。

チーズの質感に影響するといわれる「ペーハー(Ph)」を計測し、一番良いタイミングで型に入れ、成型していきます。その後、温度管理された部屋で3週間ほど熟成します。

そうした工程を経て出来上がったのが…石狩産 羊のミルク100%!その名も「石狩平野」(100gあたり1400円)です。ほろりとした食感とほのかな酸味は、日本では味わったことのない、羊ならではのカマンベールのようなチーズです。

こちらは、羊のミルクで作った「ブション」(5個入り800円)。ブションとは、フランス語でワインのコルクを意味する一口タイプのチーズです。

さらにヨーグルトも羊のミルクで!クセのない、濃厚な味わいはハチミツとの相性抜群です。

札幌グランドホテル1階のノーザンテラスダイナー。山本さんの羊のチーズに期待を寄せているのはこちらの菱沼シェフです。

菱沼シェフ「羊を輸入して牧場までつくる力量には脱帽しています」

実はグランドホテルの朝食バイキングには山本さんが牛乳で作ったチーズ「フロマージュブラン」が提供されています。このチーズは2人で試食を繰り返し、1年かけてメニューに取り入れました。

山本さんの夢は、羊のチーズが買えたり、羊と遊べたりする観光牧場を石狩につくることです。

山本さん「10代20代が最高で、年を取ると落ちぶれていくとかいうけど、違うんだなそれが。50代が人生で最高!経験もあるし人脈もあるし、全てが揃うのが50代。その話をイタリア人の60代の農家に話したら『いや何言ってんの、60代の方が面白い』と言われて。俺もまだまだだなぁって…。」


あくなき探求心で夢を追い続ける山本さんのチーズ、是非試してみてはいかがでしょうか。


「チーズマーケット中央店」

住所…北海道札幌市中央区南4西4

時間…午前11時45分~午後8時(不定休)

Tel…011-215-1935


   


  

   

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