「手話は言語」道内で活躍するコロナ禍の手話通訳とは

2020年に入ってから、新型コロナウイルスの感染拡大で、知事が会見を開く機会が増えましたが、会見で、知事の隣にいるのが手話通話士と呼ばれる人たちです。耳の聞こえない人達にも、どう情報を届けていくか、道内の手話通訳の現状を取材しました。

札幌に住む越智誠(おち・まこと)さん。生まれつき耳が聞こえず、コミュニケーションは手話を使っています。日ごろのニュースは、新聞やスマートフォンでチェックしていますが文字よりも手話のほうが情報を理解しやすいといいます。

越智誠さん(手話)「例えば英語の勉強がありますよね。聞こえる人は日本語を先に覚えて次に英語を勉強する。第2言語が英語。私たちは手話が第1言語、文章は第2言語。長い文章の理解が難しいろう者もたくさんいます。そういう人は手話が通じます」

聴覚障害者=ろう者の当事者団体、北海道ろうあ連盟によりますと、道内で、聴覚に障害がある人はおよそ2万5000人。そのうち5000人が手話を使って生活しているとみられています。道は2018年「手話は言語だ」との認識を広めるため、条例を制定しました。知事などの会見も、後日、道の公式youtubeにアップする際に手話通訳をつける形がとられてきましたが、会見時に生でつけることは行っていませんでした。

北海道ろうあ連盟の事務局長・中さんも、聴覚障害があり、日常的に手話を使っています。道の緊急事態宣言が出たとき、宣言が出たことだけはわかっても、知事の説明した理由や背景がわからず、不安だったと振り返ります。

北海道ろうあ連盟・中和彦事務局長(手話)「なぜ手話(通訳)がないのだろう、ろう者の命を軽く見ている、聞こえる人の命は重く見ている。差別なのか。聞こえる人もろう者も関係なく『情報を得る』ということは人権として同じなのに、会見の内容を聞こえる人は理解できて、自分は理解できない、抵抗感がありました」

聴覚障がい者からの指摘を受け、道は3月から知事会見の手話同時通訳を始めました。北海道ろうあ連盟は、HBCなど道内のテレビ局に手話通訳を含めて放送するよう要望。現在、HBCでは、知事と札幌市長の会見を生放送する場合、手話通訳を含めて放送しています。

現在、知事会見の通訳を担当しているのは、厚労省の認定試験に合格した「手話通訳士」で、道内には88人います。その多くは道ろうあ連盟に所属していて、会見など要請があった際に参加します。しかし、手話通訳士の人数は、「圧倒的に足りない」といいます。

北海道ろうあ連盟・中和彦事務局長(手話)「手話通訳を養成するためには、いろいろな勉強、手話の技術、聞き取り、頭で要約して意味を考えて手話で表現する技術が必要。それは簡単にすぐ会得できません。2~5年かかってやっと通訳になるというくらい簡単ではありません」

手話通訳は、知事の発言という「音」を「目」で見てわかるように、映像として表現することが求められます。単語を並べるだけでは伝わりません。身振りの大きさや顔の表情も含めて表現するのです。そのため手話通訳の交代は10分から15分おき。それほどハードなのです。

手話通訳士・伊藤喜幸さん「汗びっしょり…暑いです」

この日も、無事に役目を終えました。

手話通訳士・大出めぐみさん「文章をどう表現したら伝わりやすいか意識しています」

手話通訳士・伊藤喜幸さん「新型コロナの話題なら、知事が眉間にしわを寄せて話す。思いを伝えるときに表現が変わってきます」

越智誠さん(手話)「新型コロナウイルスで先行きが見えない状況ですが、このあとの災害、地震・大雨・洪水のときでも手話通訳がつくのが当たり前になることを期待したいです」


《取材メモ》

手話を学ぶには、自治体などが行う講習会に参加したり、地域の手話サークルに参加したりする方法があります。興味を持った方は北海道ろうあ連盟011-221-2695に問い合わせてみてください。現在、北海道ろうあ連盟に登録している手話通訳者の数は390人で、平均年齢は56.4歳。うち女性が351人と圧倒的に多くなっています。その中で、会見や政見放送などに登場するのが、「手話通訳士」と呼ばれる資格を持つ方々です。検定試験の合格率は8%~10%だそうですが、こちらは現在道内に88人います。しかし、手話通訳者はまだまだ足りていないのが現状です。少なくとも災害などの命に係わる情報については、情報格差が現れないようにするために、今後すそ野が広がっていくことが望まれます。

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